2017年7月現在、仮想通貨業界の話題をさらっているのが8月に起こると噂されている「ビットコインの分岐(フォーク)問題」です。

ビットコインは本当に分岐してしまうのか?分岐するとどうなるか?

などビットコインの分岐問題に関わる情報をまとめて紹介していきます。

今回の問題で実行される計画は以下の4つのいずれかです。

  • segwit
  • UASF(ユーザー・アクティベート・ソフト・フォーク)
  • segwit2x(セグウィット2エックス)
  • UAHF(ユーザー・アクティベート・ハード・フォーク)

これら4つのうちのどの案を採用するかを巡ってマイナーとコミュニティの間で議論が行われています。

それぞれがどのような内容でどんな影響を及ぼすのかを含めて分岐問題を紹介します

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そもそも分岐するとは?

ビットコインの分岐(フォーク)には「ハードフォーク」「ソフトフォーク」の2種類があります。

「ハードフォーク」とは、システムの大幅なアップデートを行いこれまでのマイニング仕様を一新して新しいチェーン作成方法に移ることです。従来のマイニングとは全く異なる方法になり、それによってチェーンが分岐して新しいコインが誕生します。

従来のコインは存在したままで新しいコインが誕生するので、2つのコインが同時に存在することとなります。

ハードフォークが実行されて2つのコインに分かれると、下記のどちらかの状態になります。

  1. どちらかのコインが使用できなくなる
  2. 両方共のコインが上場されて両方とも取引が行われる

これまでハードフォークが行われたアルトコインの中には、どちらかのコインが使用できなくなったコインもありますし、両方とも取引が継続して行われているコインもあります。

ビットコインでハードフォークが起きた際はどちらの結果になるかまだ分かりません。

 

これに対して「ソフトフォーク」は、マイニングシステムの小規模なアップデートを行うことです。従来のシステムの基本は引き継いだままで若干のシステム変更を行います。

この際コインの分岐は起きず、利用する側にもアップデート内容以外の影響はあまりありません。

今回の8月の騒動ではハードフォークかソフトフォークのどちらかは必ず実行されます。

なぜビットコインの分岐問題が起こったの?

そもそも今回の分岐問題が起こった原因としてはブロックチェーンの「スケーラビリティ問題」にあります。

スケーラビリティ問題とは、ブロックチェーンに記録されている取引データがブロックチェーンのブロックスケール(データ容量)を圧迫してデータ処理速度が遅くなっている問題のことです。

処理速度が遅くなると取引にかかる時間が長くなってしまうのでビットコインの取引に支障をきたしてしまいます。

このスケーラビリティ問題を解決するために出された案が「segwit」「UASF」「UAHF」「segwit2x」です。

それぞれの案がスケーラビリティ問題の解決に導くことができるのですが解決方法が異なり、それに付随してくる影響も違うので議論を呼んでいます。

segwitとは

segwitとは、ブロックチェーンに記録するデータ量を小さく(圧縮)して一つのブロックに現在よりも多くのデータを記録できるようにするソフトフォーク案です。segwitをブロックチェーンに実装することによりスケーラビリティ問題は一定期間終息を迎えます。

ソフトフォークなのでチェーンの分岐は起こらず、これまでのビットコインが継続して使用できます。

この計画はビットコインコア開発チームが主導なって開発を進めていて、マイナーからの支持はあまり受けていません。

特にbitmainはAsicBoostが使用できなくなるので何としても避けようとしています。AsicBoostとはbitmainが特許を持つマイニングを行う際の消費電力を抑えるための装置です。

UASFとは

UASF(ユーザー・アクティベート・ソフト・フォーク)とはマイナー以外(ビットコイン開発者チーム・取引所など)が主導でビットコインのアップデートを強制的に行おうとするソフトフォーク案です。BIP148(ビットコインに関する148番目の改善案)としてビットコインの改善案に盛り込まれました。

具体的には、ビットコインのスケーラビリティ問題を解決するためにsegwitの実装を目指し、8月1日以降segwitのシグナルが発信されていないブロックは認めないとすることです。

UASFはこの計画より前にマイナーが出したBitcoinUnlimited計画の実現を防ぐための対抗案として出されました。BitcoinUnlimitedとはブロックチェーンのブロックサイズを1MBから2MBにスケールアップしてチェーンを分岐させるハードフォークです。

通常の場合、フォークを行う際はマイナーとビットコインコアの多数決でどの案を採用するのか決定しますが、UASFはマイナーの意見を無視してマイナー以外のコミュニティや取引所、ユーザーが主導となって強制的に自分たちの案を通そうとする方法です。

日本の取引所ではコインチェックやZaifなどはUASFに賛成の声明を発表しました。

 

マイナーの意見を反映しないとするUASFをマイナーが認めるはずもなく、更にはマイナーが使用するAsicBoostはsegwitシグナルが発信されたブロックのマイニングを行うことができないので通常のマイニング方法で採掘を行わなければならなくなります。

そこでUASFに対抗する案としてマイナーが出した計画が「UAHF」です。

UAHFとは

UAHF(ユーザー・アクティベート・ハード・フォーク)とは、マイナーが主導となりマイナー独自に分岐させたチェーンを採掘(マイニング)することで新しいチェーンを作り出すハードフォーク案です。

最大規模のマイニングプールであるantpoolを運営するbitmainがUASFの対抗策として6月14日に発表しました。

UASFがマイナーを無視した策ならUAHFはユーザー・ビットコインコアなどを無視した計画になっています。

この計画はbitmainのみの参加では実現できないので、その他のマイナーがこれに賛同するかどうかがカギになります。

恐らく最大のマイニングプールを持つbitimainが新しいチェーンのマイニングを始めるといくつかのマイニングプールはそれに続くことになるでしょう。

しかしこの計画は、チェーンが分岐して生まれた新しいコインをユーザーや取引所が使用するかどうか分かりません。使用しないとすると、bitmain側が勝手に価値もない新しいコインをせっせと採掘することになるのでbitmainにとって全く意味がありません。

しかしながらUAHFはマイナー以外の支持はほとんど得られていない状態なので、上記のような無意味な計画になってしまう可能性があります。

この状況を打開したいと考えていたbitmainは新しく出された「segwit2x」計画に乗っかることにしました。

segwit2xとは

segwit2xはまずsegwitを実装してからその後ブロックチェーンのスケール(サイズ)アップするというソフトフォークとハードフォーク両方を行う案です。ブロックチェーンの取引データ容量を小さくした後にブロックのスケールアップも行います。

segwit2xの「2x」とはブロックチェーンのサイズを1MBから2MBにサイズアップすることで、UAHFでマイナーが実行しようとしていた計画です。

UASF・UASFとは違い、ビットコインコミュニティ(マイナー、開発者、取引所などビットコインに関わる人たち)の賛同を得た上で実現しようとする計画です。segwit2xを実現させる為には90%以上の賛成票が必要になります。

UASF・UAHFはそれぞれ、賛同を得ずに強行しようとする案なので「ちゃんと賛同を得てアップデートを行おうよ」と出された案がsegwit2xです。

この計画は5月22日~24日にニューヨークで行われた「コンセンサス2017」でバリーシルバート氏によって発表されました。

コンセンサス2017は、ブロックチェーンとデジタル通貨経済の基盤を構築している業界の新興企業、投資家、金融機関、エンタープライズ技術リーダー、学術および政策グループからの100人以上のスピーカーと2,000人以上の出席者を迎えて行われる、仮想通貨に関わる最も大規模なサミットです。

参照:仮想通貨のカンファレンス、「コンセンサス2017」がNYにて開催。再び仮想通貨全体の高騰となるか。

segwit2xはNY協定としてビットコインに関わる人たちに認知されることになりました。

ビットコインコア開発者チームはsegwit(ソフトフォーク)実装は含まれているものの、ブロックチェーンのスケールアップ(ハードフォーク)も行われるのでsegwit2xには難色を示しています。

マイナー側としてはsegwitは実装されるものの、その後スールアップが行われることでAsicBoostが継続使用できるためsegwit2xを支持しています。

結局どの計画が採用されるの?

4月頃からこの分岐問題でさんざん議論が行われてきましたが、結局どの計画が採用されて実行されるのでしょうか。

7/24現在ではsegwitを実装するためのBIP91がアクティベートされたのでsegwitが採用されることは確実です。BIP91に関してはこちらのサイトで詳しく紹介されています→ビットコイン最新の見通し

今後の流れをまとめると

  • 8月中旬にsegwitが採用される
  • 8月後半にsegwitが実装されて使用可能になる
  • 11月にサイズアップが行われる可能性がある

segwitの実装は決定したのでサイズアップが行われるかどうかです。

したがって残っている計画としては

  • segwit(取引データの圧縮)
  • segwit2x(取引データの圧縮+ブロックのサイズアップ)

このどちらかです。

賛同を得ずに計画を強行するUASFとUAHFは採用されことになったので、ビットコインの混乱状態は避けられそうです。

segwitの実装に関してはマイナーもビットコインコアも同意していたので問題ありませんが、その後11月に行われる可能性があるスケールアップ(2x)が論点になってきます。

スケールアップが行われるとブロックチェーンが分岐して2つのコインに分かれてしまうので今後の動向に要注目です。

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